古巣凱旋の大谷がエンゼルスに抱く複雑心境…育ててもらった恩あれど、残留交渉にはガッカリ

公開日: 更新日:

年俸後払いの意図

 投打の二刀流はさまざまな波紋を呼ぶ。通常中4日の先発ローテーションが、打者も兼ねる大谷の加入によって不規則になった。打者としては守備に就かないDHだから、本来のDHが割を食う。当時のDHはメジャー通算703本塁打のプホルスだったが、大谷が加入したことで一塁にはじき出された。大谷が1年目から投打で突出した成績を残したのならともかく、打者としては打率.285、22本塁打、61打点も、投手としては4勝2敗と、それほどではなかった。大谷はシワ寄せのいく先発陣や配置転換を受け入れた主砲のおかげで投打に出場機会を得て、メジャーで確固たる地位を築くことができたのだ。

 そうやって投打でエンゼルスの中心選手に成長すると、チームとして勝てない現状がもどかしくなった。

 投手として9勝(2敗)、打者として46本塁打で最初のMVPを獲得した21年9月には、入団以来、早々とプレーオフの可能性が消滅する現状にブチ切れた。「ヒリヒリするような9月を過ごしたい」と発言。チームに必要なことについて「それは自分というよりはフロントだったり、首脳陣の分野だと思う」と言ったのだ。

 しかし、エンゼルスは翌22年以降も早々とプレーオフへの道が断たれる状態が続いた。結局、大谷が入団してからの6年間はすべて負け越し。FAを取得する前年の22年オフには、ミナシアンGMに何度もチームの補強プランや現状を聞いたと言われる。モレノ・オーナーの方針なのか、GMが動かなかったのかは定かじゃないが、少なくとも近年はぜいたく税を覚悟して補強に大金を積もうとしたという話は聞こえてこない。

 それでも大谷はFAを行使した昨オフ、移籍先の選択肢からエンゼルスを外さなかったといわれている。別の特派員がこう言った。

「球団も選手もファンもアナハイムという土地も気に入っていたからです。FA取得後、ドジャースだけでなくジャイアンツやブルージェイズも10年総額1000億円超とほぼ同額のオファーを提示したのに、エンゼルスはしなかった。大谷自身の提案で年俸の97%を後払いにすることを各球団に伝えても、エンゼルスはクビを縦に振らなかったといいます。後払いの提案はすでにトラウト(33)とレンドン(34)の2人と長期の大型契約を結んでいるエンゼルスへの配慮かもしれないのに、それでも応じなかったモレノ・オーナーであり球団のスタンスに落胆したのではないか」

 エンゼルスタジアムでプレーする大谷には、古巣に対する感謝の気持ちと、憤りにも近い感情が交錯しているようなのだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    中日「ポスト立浪」に浮上する“第3の男” 侍J井端弘和監督、井上一樹二軍監督の名前が挙がるが…

  2. 2

    大谷が2026年WBCを辞退する可能性…二刀流継続へ「右肘3度目手術」は絶対避けたい深刻事情

  3. 3

    金銭トラブル退団ヤクルト畠山コーチ「若かりし頃の愚行録」…酒浸りでデーゲームに朝帰り、練習サボって風呂

  4. 4

    ドジャースの“朗希タンパリング疑惑”で大迷惑!米29球団&日本プロ球団こぞって怒り心頭の納得理由

  5. 5

    “懲罰二軍落ち”阪神・佐藤輝明に「藤浪化」の危険すぎる兆候…今が飛躍か凋落かの分水嶺

  1. 6

    巨人・阿部監督「心折れそう」…ヘルナンデス痛恨の左手首骨折離脱で現場&フロントWパンチ

  2. 7

    新庄監督は日本ハムCS進出、続投要請でも「続投拒否」か…就任時に公言していた“未来予想図”

  3. 8

    中日「立浪監督続投」なら過去最大級の主力流出危機に…左腕・小笠原はメジャー挑戦濃厚

  4. 9

    巨人ドラフト戦略に異変…浅野翔吾が覚醒気配で1位は《右の大砲》から《鳥谷2世》に乗り換え

  5. 10

    今さらナゼ? 中日立浪監督「コーチ配置転換」に疑問噴出…《立浪を更迭せよ!》の声まで

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    阪神「老将の孤立無援化」の懸念…岡田監督に“勇退説”でコーチや選手もソッポの可能性

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    「24時間テレビ」に“旧ジャニーズ不要論”噴出…20年以上続いたメイン司会途絶えて視聴率回復の皮肉

  5. 5

    大谷が2026年WBCを辞退する可能性…二刀流継続へ「右肘3度目手術」は絶対避けたい深刻事情

  1. 6

    巨人ドラフト戦略に異変…浅野翔吾が覚醒気配で1位は《右の大砲》から《鳥谷2世》に乗り換え

  2. 7

    「麻生派でも裏金作り」毎日新聞スクープの衝撃!党政治刷新本部座長の派閥議員は国会で虚偽答弁か

  3. 8

    松田聖子と神田正輝の心中は? 神田沙也加さん元恋人・前山剛久の俳優復帰宣言に浴びせられる非難

  4. 9

    自民党総裁選で蠢動する“生臭い”顔ぶれ…甘利、萩生田、菅が「復権作戦」を醜悪展開

  5. 10

    もはや「苦行」、「回数ごまかせる」の指摘も…24時間テレビ「やす子マラソン」強行に視聴者ドン引き