「行人坂の魔物」町田徹氏
■昭和の竜宮城の お家騒動
このプロジェクトが行き詰まったときの救世主が、みずほ銀行だった。過去にこの場所で、2回も巨額損失を出し失敗した相手に、再び融資する不可解さ。
「巨額損失を出しそうな企業に借り入れの返済資金を融資する『追い貸し』は、特別背任や善管注意義務違反になりかねない行為で、みずほ銀行の劣化ぶりがよくわかります」
目黒雅叙園の創業者の孫娘たちは西村裕二に相談。元住友信託銀行のトップ営業マンで、今は不動産コンサルタントの西村は、人脈や知識を駆使してローンスターを追いつめる。
「西村という、大手ファンドと銀行相手に闘うヒーローがいたことに驚きました。ぼくのイメージでは、喧嘩っ早くて曲がったことが大嫌いという江戸の職人さんの印象です。サラリーマンはトップ次第で翻弄されます。半沢直樹みたいに組織内で立ち向かうやり方もありますが、西村さんは組織を飛び出して自分の正義を通しています」
まさに、「事実は小説より奇なり」である。