「奇動捜査ウルフォース」霞流一氏
その渡辺謙と山ちゃん風刑事が乗り回すのが掟破りの改造パトカー〈狼炎号〉。バンパーの下から鉄球が飛び出したり、後部からミストが噴出したり、007のアストン・マーチンに匹敵する(?)装備付きだ。
「『サンダーバード』や『ウルトラ警備隊』を見て育った世代ですから、メカに憧れるんですよ。でも、何でもアリのすごいメカではなくて、からくり程度のものがちょうどいい。映像にするならCGじゃなくて特撮で撮りたいですね」
そんな2人が取り組むのが、伝説的な演歌歌手の遺族や愛人の子どもが絡む連続殺人事件。死体の腹の中にマイクが突っ込まれていたり、墨汁まみれの全裸死体が発見されたりと、横溝正史の犯罪現場に007が登場するような奇妙な世界が展開する。
「登場人物はアクの強い人物ばかりですが、いずれも僕が映画の世界で出会った変な人たちのイメージを生かしています。映画という特殊な世界の変な人は、僕にとっては〈黒い宝〉です」
(祥伝社 940円)
◇かすみ・りゅういち 1959年、岡山県生まれ。映画会社勤務の傍ら創作に励み、94年、横溝正史賞佳作の「おなじ墓のムジナ」でデビュー。主な作品に「スティームタイガーの死走」「羊の秘」など。