『別れを力に在宅で看取ったわが子の「証」』二宮護著
身内を病気で失った悲しみを残された家族はどのように受け止め、乗り越えるのか。それがわかる一冊。がんに侵された13歳の長男の1年半の闘病生活と家族のその後の再生を克明に記録した。著者はフリーランスの編集・記者である父親。愛情あふれる文章に心を打たれる。
死を前にして「ありがとう」を言い続ける長男。最期に看護師さんたちが、中学の野球部で使う試合用のユニホームに着替えさせてくれたとの記述は、涙なくしては読めない。
人間の死には、生物的・物理的な死と、周囲の記憶から存在が消える社会的死の2種類があるという。長男の死後、周囲の励ましに、長男はまだ死んでいない、と感じられるという著者。身内を失った家族の再生に周囲がどう関わるのか。そのヒントにもなる。
(インプレスコミュニケーションズ 1500円)