「思い出は満たされないまま」乾緑郎著
遥子は、離婚を決意して息子の尚之を連れ、生まれ育った団地に戻る。ある日、遥子は尚之を子供の頃に遊んだ「ひょうたん島」に連れ出す。神社の敷地にあるその雑木林の丘は、立ち入り禁止の場所だが、銀杏拾いや昆虫採集にと住人たちは勝手に出入りしていた。遥子が頂上に到着すると、張り切って先を歩いていた尚之の姿が見当たらず、呼んでも返事がない。夜になっても尚之は見つからず、警察から知らせを受けた夫の明彦が団地に駆けつけてくる。同じころ、母親とはぐれて団地に戻った尚之は、ある少女から声をかけられる(「しらず森」)。
団地を舞台にしたさまざまな味わいの不思議な7つの物語。(集英社 1500円+税)