「スタープレイヤー」恒川光太郎著
もしも10の願いが叶えられるとしたらどうする? ただし、抽象的だったり観念的な願いはダメ。つまり「幸せになりたい」という願いは具体性がないのでダメ。あとは物理法則の土台を変えてしまうような願いもダメ。願いが決まったらボードに文章の形で書くと審査され、それが通ると確定する。
一番大きな問題は、あなたのいる場所は地球ではなく、どこかの惑星であることだ。くじに当たった瞬間に、そこへ飛ばされるのである。元の世界に戻るとの願いは、スタートから100日後にならないと叶えられず、戻ったら残りの願いの数にかかわらず終了となる─―というのが、斉藤夕月、34歳無職に舞い込んだ状況である。
道を歩いていたら、いきなり男が現れて、くじを引けと言われ、引いたら1等のスタープレイヤーが当たったと言われるのだ。物語は意外な方向にどんどんズレていき、さすがは恒川光太郎、たっぷりと読ませるが、どういう物語が展開するかは読んでのお楽しみにしておこう。
この手の小説の面白さは、自分ならどうするだろうと考え込むことだ。たとえば、若返ること、下腹を引っ込めること、階段を駆け上ってもハアハア言わないことなど、普段から考えていることはたくさんあるが、なにしろ願いは10に限定されている。ここはもっとよく考える必要がある。本当にそれでいいのかと熟考する必要がある。考えているだけでなんだかとても楽しくなってくる。