「東京者がたり」西村賢太著

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 著者が16歳で家を出て最初に住んだのは、日暮里のラブホテル街の中にある家賃8000円の3畳間だった。クーラーも扇風機もないうえに、窓を開けるとラブホテルの十数機のエアコン室外機が熱風を送り込んでくる。

 1日でいいから涼しいビジネスホテルの部屋でゆっくり寝てみたいと思っていた。

 2年後、2日続けて日雇いに行って懐が温かかった著者は酔った勢いでそのビジネスホテルに泊まった。たかだか4階か5階の〈超高層階〉から熱帯夜の住宅地を見下ろした著者は、寝るのが惜しくて翌朝、日雇いの仕事に遅れた。(「日暮里」)

 著者がゆかりの街を通してこれまでの人生の軌跡を語る随筆集。

(講談社 1600円+税)

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