「家族の健康を守る家」深谷賢司著
著者は金沢大学医学部出身の脳神経外科医。日々繊細な手術に明け暮れるドクターが家づくりの本を書いたのには訳がある。
大学病院に勤務していたころ、転勤が多かった。そのたびに家族はアパートや借家を転々とした。勤務地は北陸3県。どの家も冬はひどく寒く、夏は暑かった。そのせいか妻は冷え性で低体温症。子どもたちもよく風邪をひいた。
住みにくい家、不快な家をいやというほど体感して、ドクターは考えた。家族が健康に暮らせる家を建てよう。そして大学病院を辞め、転勤のない病院に移り、10年前に家を建てた。
その個人的体験に医者としての知見を交えて書いたのがこの本。家について自分なりに勉強し、大手住宅メーカーに失望し、行き着いたのは地元工務店による「ソーラーサーキットの家」だった。外断熱、二重通気、24時間換気の家は、内部の温度差がなく、一年中快適。空気がきれいで、カビやダニも発生しにくい。おかげで妻の体調が改善し、さらに5人の子宝に恵まれて、9人兄弟の大家族になった。
家は人間の心身を守り休めるためのシェルターであるべき、というドクターの目線は、これから家を建てようという人に大いに参考になるだろう。(PHP研究所 1300円+税)