「当確師」真山仁著
聖達磨は、当選確率99%という「当確師」を自称するやり手の選挙コンサルタント。今回聖が依頼されたのは、政令指定都市高天市の市長選。高天市は日本で一番住みたい都市に4年連続1位となり、大災害時に備えた首都機能補完都市にも選定されていた。高天市をイメージアップさせた現職の鏑木次郎市長は、市民からの大きな支持を得ている一方、そのあまりの権力の集中に危惧を抱く反市長陣営も。彼らが3選を阻止すべく聖に打倒鏑木のミッションを持ち込んだのだ。
聖が対抗馬に選んだのは幼いときに病気で聴力を失い、市民相談のNPO法人の代表を務める黒松幸子。幸子は鏑木の妻・瑞穂の親友で、瑞穂はまた高天市有数の財閥グループの総帥で、大票田の宗教団体の総代でもある。この複雑な関係を利用して、圧倒的に勝ち目のない選挙戦に起死回生の逆転劇をもくろむ聖……。
選挙をめぐる虚々実々の駆け引きの実態を描きながらも、政治に不信と諦めをもつ現代日本人へ向け、民主主義の在り方とその力を問う、エンターテインメントな選挙小説。
(中央公論新社 1500円+税)