「1974年のサマークリスマス」柳澤健著

公開日: 更新日:

 かつて、TBSラジオの深夜放送「パックインミュージック」のパーソナリティーとして活躍したアナウンサー・林美雄がいた。金曜(木曜深夜)の午前3時から午前5時までという時間帯に、たいした期待もされないままスタートした番組は、熱狂的なリスナーに支えられた伝説の番組と化した。本書は、林が自身の目と耳と足で作り上げた番組の歴史とその時代に迫った意欲作だ。

「世の中には広く知られていないけれど素晴らしいものがある。本当にいいものは隠れているから、自分で探さないといけない」という林は、その言葉通りに自分がいいと思ったものだけを熱く伝えた。ユーミンを発掘し、「八月の濡れた砂」などの日本映画に火をつけ、公害反対運動やベトナム戦争など、自身が興味を持った話題は何でも電波に乗せた。

 番組終了の際には存続運動まで起こるほどの番組を作ったひとりのアナウンサーを通して、あの時代のメディアとそれを支えた人々の姿が見えてくる。(集英社 1600円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情