「ポーラースター☆ゲバラ覚醒」海堂尊著
時は1951年12月。ブエノスアイレス大学医学部在学中のエルネスト・ゲバラ・デラセルナは、友人のピョートルと一緒にオートバイで南米縦断旅行に出かける計画を立てていた。ところが、ひょんなことから恋人のエリーゼの家族の前でプロポーズをする羽目になり、計画は延期。それでも旅を諦めることはできず、婚約者が止めるのを振り切ってピョートルとオンボロバイクにまたがってアルゼンチンを後にする。
エクアドルのバナナ農園やペルーのハンセン病施設など、各地で目にした貧困や労働者への弾圧は、多感な青年の心に深く刻まれる。旅は友人の死によって突然終わりを告げるが、戻ってきた祖国にはすでに自分のいる場所はなかった─―。
来年没後50年を迎えるチェ・ゲバラと彼が携わった中南米革命を描く4部作の第1弾。史実に基づきながらも、エバ・ペロンとの淡い恋、ボルヘスとネルーダとの邂逅など、フィクションを巧みに織り込みながら、革命に目覚めていく青年の心情を一人称で描く。従来の医療ものとは大いに趣を異にした著者の新境地となった話題作。(文藝春秋 1750円+税)