学生たちを過酷な条件で働かせるブラックバイトの実態
過重労働や違法労働で社員を酷使し、離職に追い込むまで使い潰すブラック企業。そんな働かせ方が今、学生アルバイトにまで広がっている。その実態を明らかにしているのが、大内裕和著「ブラックバイトに騙されるな!」(集英社クリエイティブ 1200円+税)である。
著者もメンバーを務める「ブラック企業対策プロジェクト」では、全国27の大学にアンケートを実施。その結果、アルバイトで不当な扱いを受けている学生は66.9%に上り、「残業代が支払われなかった」「正社員から暴力を受けた」「6時間を超える勤務で休憩時間がなかった」など、明確な労働基準法違反も含めて、さまざまな問題が浮き彫りとなっている。
さらに、テスト前でも容赦なくシフトを組まれたり、夜勤をさせられ講義に間に合わなくなるなど、学業に支障を来す学生も少なくない。若い頃にアルバイトを経験した人は、「そんなにひどいなら、辞めればいいじゃないか」と思うだろう。しかしそれは、その人の時代のアルバイトが辞めることが容易だった証拠だ。現在のアルバイト事情は、かつてとは激変していることを理解する必要がある。
まず、学生の貧困化だ。1995年には月の仕送り10万円以上が6割強だったのに対し、2015年には3割にまで減少。代わりに、仕送り0円が1割、5万円未満が2割にも達している。アルバイト代は遊ぶための金ではなく、貴重な生活費なのだ。
また、正規雇用の激減という労働市場の変化で、アルバイトは基幹労働を担う存在となっている。そのため企業は、アルバイトを簡単には辞めさせない。「辞めるなら懲戒解雇にしてやる」「将来就職できなくなるぞ」など、社会経験のない学生の不安をあおり、不当な労働に縛り付けていることが著者による調査でも明らかになっている。
本書では、法律のプロによるブラックバイトへの対応策も伝授。我が子のアルバイト事情を知らない人は、一度じっくり話し合ってみては。