最強将棋AI「ポナンザ」生みの親が占う人工知能の未来

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 将棋界は今、14歳の天才棋士、藤井聡太四段の話題で持ちきりだ。こうなると気になってくるのが、彼が将来戦うことになるかもしれない最強の相手、コンピューター将棋だ。

 山本一成著「人工知能はどのようにして『名人』を超えたのか?」(ダイヤモンド社 1500円+税)では、最強の将棋AIと呼ばれる「ポナンザ」の開発者が、人工知能の進化の歴史を徹底解説している。

 コンピューター将棋は、「探索」と「評価」という2つの行為を駆使して行われている。局面が与えられたとき、1手先のすべての考えられる展開を検索する。そして局面を評価する。この評価とは、予想される勝率と言い換えてもいい。そしてもっとも評価の良い局面から、また次の展開を探索していくわけだ。

 この評価方法は10年前まで、すべてプログラマーが試合内容を吟味しながら調整を重ねていた。しかし、将棋というゲームには1000項目程度の値の調整ではまるで足りない。少なくとも10万項目以上が必要であり、「ポナンザ」に至っては現在1億項目を超える調整をしているという。これをすべて人間の手で行うことは不可能だ。

 そこで、コンピューターに自動的に調整してもらおうという試みから生まれたのが、「機械学習」という手法だ。例えば、ある場面でプロが指した正解の局面と、指さなかった不正解の局面を比べて、どういった要素が異なっているのかを計算させる。そして、前者の方が良いものであると学習させる。これによって、プロ棋士と同じような手が自然と指せるようになるのだという。

 さらに2014年以降は、「強化学習」が取り入れられている。実際にあり得そうな局面を6~8手進めてみて、その結果が良かったのか悪かったのかを調べ、情報をフィードバックする学習法だ。恐ろしいスピードで進化を続け、人間の名人にも連勝している「ポナンザ」だが、今後はディープラーニング(深層学習)をつなげることで、自ら目的を設計する「知性」の獲得も可能になるかもしれない。

 本書には人工知能開発のドキュメンタリーとしての面白さもあり、将棋好きでなくても楽しめること請け合いだ。

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