政府説明のデタラメ暴く 鬼検事が森友学園問題の疑惑に肉薄
自殺者まで出ている森友学園問題は、国税庁長官の辞任や内閣支持率の急落を受けて、ようやく進展が見られそうな気配だ。今後、国民が真相の究明と責任の明確化を見守るためにも、問題の背景を改めて把握しておく必要がある。
小川敏夫著「森友・国有地払下げ 不正の構造」(緑風出版 1600円+税)では、国有地売却の不当性を徹底検証。裁判官・弁護士の経歴を持ち、国会の鬼検事との異名を持つ参院議員の著者が、数多くの資料や国会答弁をもとに、政府説明のでたらめを明らかにしている。
昨年2月9日の朝日新聞の報道を受け、翌10日に財務省が、地下に廃材と生活ごみが埋まっているという理由で、評価額9億5300万円の土地を1億3400万円で売却したことを公表。これがすべての始まりだった。しかし、値引き理由のごみなど存在しないことは容易に証明できると著者は言う。2014年10月に、森友学園の依頼でボーリング調査による地盤調査が行われており、3・05メートル及び3・10メートルの深さで沖積層が形成され、それより深くには埋設物はないことが確認されていたためだ。
これに対し政府は、苦しい説明に終始している。佐藤善信国交省航空局長(当時)は「そのボーリング調査は、自分たちが地下埋設物を探査するために行った調査方法とは異なる」としている。石井啓一国交大臣は、「かつて河川だったところを由来とするため場所によっては相当深さが違っていたであろう」と説明した。
問題は調査の目的や方法ではなく地下埋設物の情報が得られるか否かであり、国有地は河川などではなく細長いため池だったことも明らかになっている。いずれもでたらめで本質からずれた答弁であることは明白だと本書。
この問題に関わる近畿財務局や大阪航空局というお堅い役所が、ありもしないごみをあると間違え、自主的にごみの撤去費用を算出した、などと考えるのは無理がある。本書では、疑惑の焦点である安倍総理大臣と昭恵夫人について、森友学園といかに密接な関係だったかを、過去の講演や書簡から明らかにしている。行政がここまでねじ曲げられた責任の所在はどこにあるのか。今回の証人喚問で真実は明らかになったのだろうか。