「コクゾウムシ」関西弁で「気にせんといて」
「家の中のすごい生きもの図鑑」久留飛克明/文 村林タカノブ/絵
気温の上昇とともに、どこからともなく入り込んだ、さまざまな生きものと家の中で鉢合わせする季節となった。
その多くは嫌われものだが、「怖い」「気持ち悪い」と思うのは相手のことをよく知らないから。本書は、家の中とその周辺で出合うさまざまな生きものたちの生態をユーモアたっぷりに解説してくれる面白図鑑だ。
家の中の、と聞いて誰もが真っ先に思い浮かべるのが黒いアイツ、「クロゴキブリ」だろう。ご存じのように3億年以上前の石炭紀時代から、その姿はあまり変わっていない彼らは、ハチのように刺す針はないし、カメムシのように強いにおいも出さない。武器は持っていないけど、汚れがつきにくいワックスのかかった平らな体は、すき間に潜り込みやすく、夜行性でけっこう集まって生活しているらしい。
あのテカテカのワックスは、実は集合フェロモンで、そのフェロモンによってお互いが引かれ合って集まって暮らしているのだとか。
米びつの中が大好きな「コクゾウムシ」は、最近はご飯を食べる人が減って、家の中にエサがないこともあると嘆くが、実は小麦粉もパスタも食べると自白。毒はないから、コメの中に黒いものが交じっていても「気にせんといて」というが……。
なぜか登場する生きものたちは関西弁で自らのことを語り、何となく親近感さえ湧いてくる。
どこから来るのか、どんな害があるのかなども彼らとの一問一答で紹介。
その他、チョークの粉くらいのサイズの「ケナガコナダニ」をはじめ、イエシロアリやケジラミなどの小さな脅威から、ハクビシンなど大物まで60余種の生きものの生態を解説。これからの季節を快適に過ごすための一家に一冊のお薦め本。
(山と溪谷社 1000円+税)