「マツコの何が“デラックス”か?」太田省一著
マツコ・デラックスがなぜ人々を引きつけるのか。その魅力の秘密を分析するとともに、時代がマツコを求める理由を考察した現代社会論。
著者は、マツコの自虐的な振る舞いの本質を、自分への批評性であると指摘。その批評性が他人に向けられるとき毒舌となるが、自分自身に対する厳しい批評があるから、マツコの毒舌は相手から一方的な攻撃とは受け取られずにすむと解き明かす。テレビでの発言や著作から、マイノリティーに属していながらテレビにおけるメジャーな存在になったその背景を探る。一方で敗戦後と同じような放心状態に陥った現在の日本社会が、転換期に生まれ育った「団塊ジュニア」の申し子としてマツコを必然的に呼び寄せたと読み解く。 (朝日新聞出版 1300円+税)