「冥土ごはん 洋食店 幽明軒」伽古屋圭市著
悠人はにおいに誘われ、路地の奥にある洋食屋「幽明軒」にたどり着く。選んだオムライスはこれまでで一番おいしかった。 失業中の悠人は、壁に張られた店員急募の張り紙に名乗りを上げ、その場で採用される。店は店主の九原とその妻・香子、娘の果菜子による家族経営だった。
バイト初日の閉店後、悠人が掃除していると閉じた扉からにじみ出るように美しい女性が現れた。どう見ても幽霊だが、香子は慌てず接客。この店は人生の最後に訪れるあの世とこの世をつなぐ洋食屋だった。九原は明治39年生まれで21歳で死んだという女性のために「ライスオムレツ」を作る。(「別れのライスオムレツ」)
現世への思いを残した死者たちの最後の晩餐を描いた短編集。 (小学館 580円+税)