公開日: 更新日:

「東京格差」中川寛子著

 東京に存在する「格差」、それは地域格差だ。


「閑静な住宅地」は住まい選びの絶対基準ではない、と著者。田園調布や大田区山王など有名な住宅地で、住環境よりも駅からの距離など利便性にすぐれた物件のほうが値上がり率が明らかに高いからだ。「閑静」は時代に合わなくなっているのだ。

 歴史的に見れば都市の発展は「職住分離」に沿っていたが、いまや逆の常識がトレンド。むしろ流動性があり、自立的に活動する人の多い街に可能性があるという。

 資産の観点なら昔ながらのブランド住宅地だが、「面白い」のはまた別の価値。多様性を好むか嫌うかによっても東京の格差は変わってくる。

 著者は住宅情報誌などの編集経験を持つ自称「住まいとまちの解説者」。

(筑摩書房 880円+税)

「街間格差」牧野知弘著

 家を買うのも借りるのもブランド住宅地がよい、と著者。広尾ガーデンヒルズは築30年以上になるが、30坪で1億円台後半の値がつく。それは立地と建物がブランドだからだ。当たり前の話のようだが、「不動産事業プロデューサー」の肩書で多数の著書もある著者は従来の「沿線ブランド」や「都心まで○分」などの基準が崩壊し、自由が丘、下北沢、たまプラーザなどが「住みたい街」ランキングから脱落した理由を深く探る。

 東京のエリートとして育った著者自身の思い出話が生臭い「格差」論に興趣を添える。

(中央公論新社 900円+税)

「首都圏沿線格差2019」

 書店の地図コーナーに行くとずらり並ぶ沿線ガイドにまじって本書が目立つ。ほかの街ガイドと違ってテーマは「格差」。外見はありきたりだが、中身は意外に辛辣だ。

 たとえばJR京葉線の海浜幕張駅の街の風景を「とにかく(街路が)真っ直ぐで気持ち悪い」とコラムの見出しが躍る。「ゲームの街づくりシミュレーションのようだ」という感想は誰しも賛成だろうが、こんなネガティブな指摘も格差ガイドならでは。首都圏の小さなローカル線を網羅しているのも特徴。

 北総線沿線の千葉県印西市は、東洋経済の「住みよさランキング」で7年連続ベスト1位に輝いたところ。そんな豆知識も楽しい。

(スタンダーズ 1200円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」