「睡眠の常識はウソだらけ」堀大輔著
「睡眠は体によいものである」と、多くの人が考えている。しかし、本書では「寝過ぎは害である」として、さまざまな研究結果を示し、これまでの睡眠の常識を一刀両断している。
例えば、睡眠中は免疫力が低下する。睡眠で疲労が回復し病気も治ると思っていた人にはまさに寝耳に水だが、睡眠時は覚醒時より体温が平均1度程度下がる。人間は体温が1度下がると免疫力が37%、代謝量が17%も低下することも分かっている。睡眠時の方が風邪をひきやすいのは明白であり、35度の低体温時に活発になるがん細胞も増殖させかねない。
コロンビア大学の研究では、「睡眠不足の人はグレリンの分泌量が14%増加する」という結果を明らかにしている。この研究結果が報道されるとき、グレリンは「食欲刺激物質」や「食欲増進ホルモン」などと表現された。そして多くの人は「睡眠不足になると肥満物質が出てメタボになるんだ」と思わされてしまった。
しかし、実はグレリンは「成長ホルモン分泌促進受容ホルモン」とも呼ばれ、本来は栄養の吸収率を高め、細胞の成長を促進させる効果を持つ。これを肥満ホルモンのようにねじ曲げて表現するのは、いささか乱暴だ。
3時間睡眠を取らせたグループの、一方には8時間眠っていたと伝え、一方には3時間しか眠っていなかったと伝えたところ、後者だけが寝不足を訴えたという報告もある。睡眠不足と睡眠時間の因果関係に疑いを持たせる実験結果と言えるだろう。
本書では、睡眠不足をあおる風潮の背後にある製薬会社の動きにも触れながら、睡眠の本質である寝始めの90分をいかに快適に眠るか、その方法も伝授している。もう“睡眠不足”に悩む必要はない!?
(フォレスト出版 900円+税)