「朝食はからだに悪い」テレンス・キーリー著 野中香方子訳
朝食と健康に関する研究は数多く、その多くが「健康のためには朝食が大切」という論調だ。しかし、ワシントンの科学研究センターで食糧政策の研究に携わる著者は、多くの朝食研究は食品業界から資金提供を受けており、決してうのみにしてはいけないと警鐘を鳴らす。
例えば、朝食は満腹感をもたらし、昼と夜の食事量が減るためメタボの解消や生活習慣病予防に役立つという説。確かに、そのような論文もある。ハーバード大学の研究では、朝食を取る人は取らない人より体重増加は少なく、2型糖尿病や冠動脈性心疾患リスクも低かったという報告をしている。
しかし同時に、朝食を取らない人には喫煙量が多く、運動量が少なく、アルコールを多く摂取する傾向があったことも分かっていたという。つまり、都合のよい研究結果だけが公表されていたということで、単純に朝食を取りさえすれば健康になるなどと考えるのは軽率だ。
さらに、一般的な朝食の内容は糖質が多すぎる。シリアルは手軽でヘルシーというイメージだが、大半は砂糖をまぶした炭水化物であり、血糖値の急上昇を免れない。他にも、トーストにパンケーキ、マフィンなど、手軽に食べることのできる朝食ほど糖質がたっぷりだ。朝起きてすぐにこれらの朝食を取ると大量のインスリンが分泌され、やがてインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性という状態に陥り、血糖値が下がらなくなる可能性がある。
本書では、どうしても朝食を食べたいなら鶏胸肉か魚類、ナッツ類などを勧めているが、それができなければ朝食をきっぱりやめて1日2食にするべきだと説いている。健康長寿を目指すなら、朝食を見直してみては。
(ダイヤモンド社 1800円+税)