「北斎まんだら」梶よう子著
信州小布施の豪商の跡取り・三九郎は、高名な絵師・北斎に絵を学ぶため、江戸に出てきた。呉服商の紹介で北斎の住む長屋を訪ねた三九郎は、散らかり放題の部屋の惨状に目をむく。ひるみながらも弟子入りを申し出るが、応対した北斎の出戻り娘・お栄とは、話がすれ違うばかりで、要件が伝わらない。布団から出てきた北斎は、三九郎の前で鮮やかに瀑布の下絵を描き上げると版元のもとに行ってしまう。
三九郎がお栄の火事見物に付き合わされ町に出ると、派手な太夫姿の男が声をかけてきた。美人画で名をはせる北斎の弟子・英泉だった。三九郎はお栄と英泉の会話から江戸市中に北斎の贋作が出回っていることを知る。
北斎のもとに集まる個性的な絵師たちを主人公に描く歴史長編。
(講談社 740円+税)