「サル化する世界」内田樹著

公開日: 更新日:

 日本の目の前には、中央統制を組み合わせて劇的成功を収めた「チャイナモデル」と、市民が自力で軍事独裁を倒して民主化を達成し、経済的成功をも収めた「韓国モデル」がある。これに対する嫉妬から「嫌韓嫌中言説」が生まれたと内田はみている。

 この2つのモデルの二者択一を迫られた日本の政官財メディアの相当部分が、民主政体の韓国モデルより強権政体の中国モデルのほうが望ましいという選択をした。嫌中言説の抑制と嫌韓言説の高進が同時に起きたのはそのためである。安倍政権は無意識的に中国の強権政治に憧れており、安倍が目指す「改憲」は単なる「非民主化」である。「非民主化」と市場経済を組み合わせることで、中国のような劇的成功が起きると本気で信じている。

 近視眼的な思考が蔓延する社会への鋭い警告。

(文藝春秋 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    メッキ剥がれた石丸旋風…「女こども」発言に批判殺到!選挙中に実像を封印した大手メディアの罪

  2. 2

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  3. 3

    都知事選敗北の蓮舫氏が苦しい胸中を吐露 「水に落ちた犬は打て」とばかり叩くテレビ報道の醜悪

  4. 4

    東国原英夫氏は大絶賛から手のひら返し…石丸伸二氏"バッシング"を安芸高田市長時代からの支持者はどう見る?

  5. 5

    都知事選落選の蓮舫氏を「集団いじめ」…TVメディアの執拗なバッシングはいつまで続く

  1. 6

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  3. 8

    ソフトバンク「格差トレード」断行の真意 高卒ドラ3を放出、29歳育成選手を獲ったワケ

  4. 9

    “卓球の女王”石川佳純をどう育てたのか…父親の公久さん「怒ったことは一度もありません」

  5. 10

    松本若菜「西園寺さん」既視感満載でも好評なワケ “フジ月9”目黒蓮と松村北斗《旧ジャニがパパ役》対決の行方