「この世界を知るための大事な質問」野澤亘伸著

公開日: 更新日:

 ページを開くと、乾燥してひび割れた大地に立つ少年たちの写真が目に飛び込んでくる。そして、写真には「ここは彼らが生まれる前は、全く違う景色でした。何があったのでしょう?」と質問が添えられる。ヒントは少年たちが持つバケツだ。

 少年たちが暮らすのはサハラ砂漠の南側、西アフリカに位置する国ブルキナファソ。

 写真と質問はさらに続く。炎天下、泥水が入ったたらいを前にした母と娘の写真に「この親子は朝から夕方まで、ここで何をしているのでしょう?」、そして母親が持つ空き缶の中の白濁した液体を飲む赤ん坊の写真には「赤ちゃんは何を飲んでいるのでしょう?」と。

 ブルキナファソは、アフリカで最も貧しい国のひとつ。1970年以降、気候変動で砂漠化が急速に進み、最初の写真の荒れた大地は、かつて周囲10キロもの湖があった場所だという。干ばつで農地を追われた人々は、金鉱に出稼ぎに出て、そこには親と一緒に働く子供たちの姿もある(たらいの前の母子たちもそうした人たち)。人々は水道がないために、安全とは言えない井戸水を飲んでいる(赤ん坊も)。

 著者はかつてカメラマンとして日本ユニセフ協会の現地視察に同行取材。本書は、その取材で目にした各国の貧困の現実を写真で示しながら、Q&A形式で伝えるビジュアルテキストだ。

 他にも、インド共和国の経済発展の一方で街にあふれるストリートチルドレンや児童労働の実態、東ヨーロッパの最貧国モルドバ共和国で横行する若者の人身売買、成人した女性の身長が著者の胸にも届かないほど栄養不足による発育阻害が深刻な人々がいるグアテマラ共和国など。8カ国の現実をデータや解説を添えて紹介。ぜひ、子供と一緒に手に取って欲しい。

(宝島社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2

    野呂佳代が出るドラマに《ハズレなし》?「エンジェルフライト」古沢良太脚本は“家康”より“アネゴ”がハマる

  3. 3

    岡田有希子さん衝撃の死から38年…所属事務所社長が語っていた「日記風ノートに刻まれた真相」

  4. 4

    「アンメット」のせいで医療ドラマを見る目が厳しい? 二宮和也「ブラックペアン2」も《期待外れ》の声が…

  5. 5

    ロッテ佐々木朗希にまさかの「重症説」…抹消から1カ月音沙汰ナシで飛び交うさまざまな声

  1. 6

    【特別対談】南野陽子×松尾潔(3)亡き岡田有希子との思い出、「秋からも、そばにいて」制作秘話

  2. 7

    「鬼」と化しも憎まれない 村井美樹の生真面目なひたむきさ

  3. 8

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 9

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  5. 10

    松本若菜「西園寺さん」既視感満載でも好評なワケ “フジ月9”目黒蓮と松村北斗《旧ジャニがパパ役》対決の行方