「ゴシック文学入門」東雅夫編
ゴシック文学とは、18世紀末から19世紀にかけ西洋で人気を博した神秘・幻想小説で、後のSFやホラー小説の源流といわれる。その魅力をつづったエッセーや論考を編んだアンソロジー。
江戸川乱歩は、中学1年のときに熱海の貸本屋で手にした“3冊本”「幽霊塔」(米国作家アリス・マリエル・ウィリアムソンの「灰色の女」を黒岩涙香が翻案)との出合いと衝撃を語る。昼夜ぶっ続けに読みふけり、熱海での生活は夢で、幽霊塔の方が真実の世界だという錯覚に陥ったほどだという。
その他、奇書「ヴァテック」とその著者、ウイリアム・ベックフォードについて記す澁澤龍彦など14編で読者を魔界の読書体験へといざなう。
読んでおきたい不朽の名作を編んだ「ゴシック文学神髄」も刊行中。
(筑摩書房 950円+税)