「『冴える脳』をつくる5つのステップ」築山節著
ワクチンの承認が進んでいるとはいえ、コロナ禍の終息はいまだ不透明だ。このような状況が続くといつも以上に健康不安が募り、ささいな体調の変化を気にしすぎるなど追い詰められていく人も増えてくるだろう。昨今の健康不安に私たちはどう対処したらよいのか。脳神経外科医である著者は、「冴える脳」をつくることで不安に正しく対処し、肉体的にも精神的にも無理のない安定した生活習慣を身につけることが、コロナ禍での健康不安に負けないための近道だと説いている。
本書では、冴える脳をつくるためのステップを5つのキーワードで解説している。たとえば、「自律」である。私たちの体には意識しなくても自動的に働く器官があり、脳幹と脊髄から出ている自律神経がさまざまな臓器と関わりながらその働きをコントロールしている。そして、脳と腸は自律神経を介して強いつながりを持っている。つまり、腸の環境を良くすることで脳の機能が活性化し、自律神経も整って全身の健康管理にもつながるというわけだ。
また、無理のない生活習慣を送る「自立」を目指すためには、運動が不可欠だと本書。筋肉を動かすと脳では血流が促進され、脳全体の活性化にも役立つ。しかし、筋力の低下は30代から始まってしまう。そのため、年齢を重ねても冴える脳を維持するためには、日々の筋トレが不可欠なのだ。
加齢による筋肉の萎縮に対しては、有酸素運動による持続的筋力トレーニングよりも、筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動がお勧め。自重のみで行うスクワットや腕立て伏せで十分なトレーニング効果が期待できる。
脳を活性化してコロナ禍の不安と闘おう。
(NHK出版 800円+税)