コロナと戦う米・中・日

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「医療現場は地獄の戦場だった!」大内啓著

 世界中を巻き込んだコロナ禍。それは世界中がコロナとの戦場になることだ。



 ハーバード・メディカルスクール(医学部)の系列病院に勤務する終末期医療専門の日本人医師。平時なら富裕層のアフリカ大名旅行に随行を依頼されるような優雅な立場だが、コロナ禍で若手医師は全員、ER(救急救命室)に集められ、「研究はストップ、100%臨床に入れ」と命じられる。全米でもトップクラスのブリガム・アンド・ウィメンズ病院。ふだんも月に8回程度はERに入る著者だが、コロナ禍では月に14回は普通。1日8時間のシフト中、防護服一式を25回から30回も着替えるという。

 本書は医療現場での挿管の模様などを詳しく解説。まるでドラマの「ER」を見ているような迫真の描写でコロナ禍の最前線が目の前に現れる。

 著者によればコロナの特徴は急激に悪化すること、酸素飽和度がなかなか上がらないことだという。ふつうの細菌性肺炎なら抗生物質の投与で「よし、効いたな」と感じる手ごたえがある。ところがコロナではそれがなく、予知ができない。しかし一般人はそんなことも知らず、イライラして来院したあげく「俺はコロナだ!」とわざと息を吐きかけるようなヤカラもいる。「地獄の戦場」は大げさではないのだ。

(ビジネス社 1400円+税)

「武漢支援日記」査瓊芳著 宋春暁訳

 著者は名門・上海交通大学の医学部付属病院に勤務する呼吸器専門の女性医師。それが今年1月の春節(中国の旧正月)、緊急事態下の武漢に赴任するよう命じられる。春節の大晦日のごちそうを食べかけていたときだったという。

 本書は彼女が経験した68日間の日記。最前線の医療現場報告としては実は本書が最初。ゆえに国内外で広く話題を呼んだという。

 意外なのは明るい話や笑いが随所にちりばめられていること。行列のできる人気店のタピオカが毎日差し入れられるとか、食事のときは次がいつか不明なので「ラクダになったみたい」に大量に水と食べ物を詰め込むなど「あるある」系のエピソードが目立つ。それが逆に現場の厳しさを伝えている。

(岩波書店 1800円+税)

「新型コロナウイルス人災記」川村湊著

 コロナ禍で引きこもりを強いられた文芸評論家。9年前の3・11を思い出す。突然の衝撃、あわてふためく政治、テレビはどこの局も同工異曲の議論ばかりで不安だけがかき立てられるのも同じだ。

 始まりはたしかに天災だったコロナ禍。しかしそれはたちまち為政者たちの失政と無策により、大人災(パンデミック)に「してしまった」のだ。

 本書は安倍政権が「緊急事態宣言」を出した4月7日からゴールデンウイーク明けまで、1カ月間にわたって書かれた日記。読みながら改めて、メディアの情報に接するたび腹の立ったあの日々を思い出す読者は多いだろう。あとになると思い出せなくなる日々の断片。後世のための記録ともいえるだろう。

(現代書館 1600円+税)

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