「いまファンタジーにできること」U・K・ル=グウィン著 谷垣暁美訳
「ゲド戦記」など多くの名作を残した著者によるファンタジー論。
出版業界の面々が集まった会合でのスピーチでは、ファンタジー作品において前提とされている「登場人物たちは白人で、中世っぽい時代に生き、善と悪の戦いを戦っている」について言及。作品内で白人と書かれていなくても、表紙には白人として描かれていると指摘。そうしないと「売れない」といわれるが、黒人やヒスパニックの子どもがファンタジーの本を買わないとしたら、自分たちが表紙に描かれていないからではないかと、読者から届いた手紙のエピソードを紹介する。
ほかにも、指輪物語や、ハリー・ポッターなど多くの名作を取り上げ、さまざまな問題提起をしながら、真のファンタジーとはどういうものかを語っていく。
(河出書房新社 1089円)