「天使の傷」(上・下)マイケル・ロボサム著、越前敏弥訳
臨床心理士サイラスと、「嘘を見抜く少女」イーヴィを主人公にしたシリーズの第2作だが、前作「天使と嘘」を未読でも大丈夫なので、気にせずに手に取られたい。
元警視の死体が発見されるところから始まる物語で、最初は自殺と判断されるが、現場の状況からこれは自殺ではないとサイラスが警察に進言する。では、誰が殺したのか。
元警視は、犯人が獄中ですでに死んでいるにもかかわらず、児童連続誘拐殺害事件を調べていることが判明し、さらに捜査の途中で発見されたメモには、イーヴィの異名「エンジェル・フェイス」の文字が書かれていた。そこでサイラスも調査を開始する。イーヴィ・コーマックはかつて異様な殺人現場で発見された少女で、その後は児童養護施設で暮らしていて、サイラスは会ったことがあるのだ。なぜ彼女の名前がメモにあるのか。
そのサイラス側の調査の記録と並行して、イーヴィの現在が語られていく。彼女は何者かに狙われていて、誰の力も借りずに逃げまわっている。そのサスペンスがじわじわとこみあげてくる。誰が追っているのか。その背景にあるのは何か。緊迫感はどんどん高まっていく。
前作で語られなかったイーヴィの過去がある程度明らかになるので、その興味もある。しかし、まだ語られていないこともあるので、それは次作に期待したい。これが面白ければ前作「天使と嘘」もどうぞ。
(早川書房 各1210円)