「草の根のファシズム」吉見義明著

公開日: 更新日:

 満州事変開始と同時に、戦争報道に誘導されるように国民の間に戦争支持の熱狂的な動きが広がった。しかし、この熱狂は一時的なもので、大正デモクラシーの延長線上にある民衆的なデモクラシーを求める意識が人々の中から消えることはなかった。この意識は、天皇制を前提とする権威主義的な性格や、日本の「帝国」意識の表れであるアジア・モンロー主義の傾向もあわせもつ天皇制デモクラシー意識ともいえる。

 しかし、日中戦争を経て、やがてそうした国民の間に、日本が盟主となって遅れたアジアを開放するというアジア・モンロー主義に支えられた意識が頭をもたげ、天皇制ファシズムが民衆の意識を覆う時代となる。

 満州事変から戦後までのこうした民衆の意識の変遷を個人の手紙や戦争体験記など膨大な資料から読み解く歴史テキスト。

(岩波書店 1628円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    悠仁さま「進学に向けた勉学の大切な時期」でも続く秋篠宮家と宮内庁の軋轢

  2. 2

    初V京都国際の《正体》と《左腕王国の秘密》…野球部“以外”の男子生徒わずか12人

  3. 3

    山陰まで及ぶ大阪桐蔭・西谷監督のスカウト活動範囲…《最新車で乗り付けてきた》の声も

  4. 4

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  5. 5

    目黒蓮をCMに再起用したコーセーにSnow Manファン大暴走 佐久間大介も別問題でファンに苦言

  1. 6

    「Snow Man=めめ以外は演技下手」定着のリスク…旧ジャニのマルチ売りに見えてきた限界

  2. 7

    もはや任意じゃなくて強制…12月2日のマイナ保険証一本化に向けて強まる国民への包囲網

  3. 8

    離職後、定年後は何をしたい? 第2位「まだ考えていない」…では第1位は?

  4. 9

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  5. 10

    "キムタク神話崩壊"へ秒読み…通算3作目ソロアルバムが1stから56%ダウンの惨憺