「人生は片々たる歌の場所」長崎浩著
「人生は片々たる歌の場所」長崎浩著
夏の昼下がり、妻と一緒に都心へ向かう電車に乗った。はす向かいの席に、若い女が座っていた。そののびのびとした肢体が、身につけているヒマワリのような黄色のワンピースをいっそう際立たせている。
著者は今でも夏の昼下がりに電車に乗ると、時に黄色のワンピースの幻影をみる。(「黄色のワンピース」)
著者はいつの頃からか京都に行くたびに金閣寺を見るようになった。派手な金色の衣装をまとっているが、かつては金箔が剥げ落ちたわびさびを感じさせる建築であったかもしれない。
著者はそこに建築当時の人びとが愛した、前景の池も背後の松山もない金閣寺を見る。(「金閣寺」)
日本の風景を叙景と短歌で描くエッセー集。 (北冬舎 2750円)