忘年会シーズン到来!料理が楽しくなる本特集

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「あたらしい家中華」酒徒著

 今日から師走。今年も残すところ1カ月となった。コロナも5類に移行し、久しぶりに忘年会を予定している人も多いだろう。そこで今回は、“自分で作る”をテーマにした食の本をご紹介。年末年始に腕を振るってはいかが?

  ◇  ◇  ◇

「あたらしい家中華」酒徒著

 note「おうちで中華」で絶大な人気を誇る謎の料理愛好家による初料理本。北京、広州、上海に10年間駐在し、各地の中華料理を食べ歩いた著者が体得した「あたらしい家中華」の特徴は、特別な調味料や道具は不要、食材もあれこれ使わない、野菜がたっぷり食べられる、というもの。シンプルな味付けで毎日食べても疲れずヘルシーな料理、それこそが中国の家庭料理だという。

 たとえば、中国の家庭では定番中の定番、「肉末蒸蛋」(豚ひき肉の中華茶碗蒸し)。卵をよく溶いて水を足し、豚ひき肉を入れて蒸すだけという簡単さだ。味付けは塩とごま油のみである。

 今が旬の里芋を使った「葱油芋艿」は蒸した里芋を小ネギと油で炒めるだけだが、大量消費してしまううまさだ。レシピは「塩」「醤油」「野菜」「茹でる」「煮る」の5ジャンル78皿は、どれも作ってみたくなる手軽さだ。

(マガジンハウス 1650円)

「お弁当デイズ」たかぎなおこ著

「お弁当デイズ」たかぎなおこ著

 子どもの頃、母が作ってくれる弁当が大好きだった著者は、結婚して子どもが生まれるとお弁当作りが楽しみな半面、ちょっと母としてプレッシャーを感じていた。

 やがて娘が幼稚園に入り、いよいよ弁当作りがスタート。ニンジンをかわいいピックに刺し、かむ力が弱いので鶏肉は蒸し焼きにし、おにぎりまですべてがミニサイズ。帰宅後、カラになった弁当箱を見て著者は大喜びする。ところが、その後、娘がちょいちょい弁当を残してくるように。悩んだ末「桜でんぶ」でピンクのおにぎりにしてみたら「もう入れないで」と大不評、さらに「卵焼きは好きじゃない」、さらに、肉がかみ切れず吐いたと先生から報告が……。

 娘と夫の弁当作りにまつわるエピソード、お弁当箱すきま埋め術や子ども時代の思い出など、たっぷりつまったコミックエッセー。「弁当作り」の舞台裏、作る人にはお役立ちネタが満載。

(文藝春秋 1320円)

「名前のない鍋、きょうの鍋」白央篤司著

「名前のない鍋、きょうの鍋」白央篤司著

 著者にとっては、鍋とは「余り野菜などを一度に片づける」ものだったが、「市販の鍋つゆを買ってきてレシピ通りに作るのが常」という人に出会い、衝撃を受ける。では市井の人々のリアルな鍋って……と気になり、18人の鍋の取材を始めた。

 蒲郡市出身の夏目楓太さんの鍋は味噌煮込み。鍋に水を張って醤油、みりん、酒、ほんだしを入れた出汁に、鶏もも、豆腐、油揚げ、白菜などを入れて豆味噌を溶く。味の決め手は「きのこ」だそうだ。

 川越市議会議員の粂真美子さんの「ごった煮」鍋は鶏団子を先に煮てスープのベースにするのがこだわり。神奈川県在住の望月啓子さんの鍋出汁は、日本酒と出汁昆布のみ。具材も白菜と長ネギ、えのき、豚バラの4つだけというシンプルさだ。

 ほかにも昆布出汁に豚とほうれん草、サバとキムチの蒸し煮鍋など、個性的な鍋とその作り主を来歴や写真とともに紹介。人柄が表れる鍋物語を読んでいるうちに、「今夜は鍋にするか」という気持ちにさせられる。

(光文社 1760円)

「自炊からはじまる『ケア』の話 自分のために料理を作る」山口祐加、星野概念著

「自炊からはじまる『ケア』の話 自分のために料理を作る」山口祐加、星野概念著

 近頃、自炊料理家の著者のもとに「自分のために料理が作れない」という声が寄せられているという。料理の腕はあるが「何を食べたら……」とか「自分のためには作る気力が湧かない」という類いらしい。

 その原因をひもといてみると、そもそも料理は献立を立てるなど決め事が多く、煩雑であること。「自分の料理に自信がない」「自分だけのために作るのはもったいない」などに起因すると気づいた。著者は料理をする意味は「そのプロセスを楽しむこと」という。料理は楽しいと感じながら取り組むと「おいしい」と感じやすく、心もお腹も満たされ、結果また作りたくなる、というらせん階段状になっている。そして自炊ができることは、自分をいたわり養っていけることだ、と。

 料理に対する思い込みをひとつずつ検証するとともに、「自分のために料理ができない」6人に自炊コーチを実践した記録を掲載。対話が進むにつれ、6人6様に食に対する意識が変わっていく様子が興味深い。

(晶文社 1870円)

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