「天気でよみとく名画」長谷部愛著
「天気でよみとく名画」長谷部愛著
気象予報士が名画を気象学の視点から読み解く面白アートエッセー。
17世紀のオランダの画家フェルメールの「デルフト眺望」に、画面からあふれ出る光の美しさは随一だと著者も感嘆。
画面の半分を占める空を覆うのは初夏から夏を代表する雲である積雲。フェルメールは、雲に多様な変化をつけることで、前後の時間の動きまで見るものに感じさせているという。この時点で絵の中の降水確率は10%。さらに細部を検証しながら、日の出から2時間以上が過ぎた朝の光が降り注いでいる時間を描いていることが分かるという。
ほかにも、ゴッホの「星月夜」の夜空に描かれた渦の正体をはじめ、ムンクの「叫び」や北斎の「冨嶽三十六景」、そして「鬼滅の刃」などのマンガまで。
アートの新しい見方を教えてくれる。
(中央公論新社 1100円)