「古本食堂新装開店」原田ひ香著
「古本食堂新装開店」原田ひ香著
70代の珊瑚は亡くなった兄の滋郎が残した神保町の古本屋を継いだ。店を手伝っている親戚の美希喜が、店のレジ横にテーブルを置いてカフェスペースをつくろうというので、改装工事を頼んだ。
すると、工務店から見てほしいものがあると連絡がきた。壁の漆喰(しっくい)を剥がしたら、落書きらしきものが出てきたという。滋郎は金がないので、店を自分で改装していた。ギリシャで漆喰の壁を見て、漆喰にしようとしたらしい。珊瑚は店に行って壁を見た。そこには「愛してる。一緒に行きたい。」と書いてあった。滋郎は外に出せない自分の気持ちをここに封じ込めたのだ。
老母のために古い雑誌を探す女性など、古書店に集まる人々を描いた物語。
(角川春樹事務所 1760円)