「茨鬼(いばらき)」吉森大祐著
「茨鬼(いばらき)」吉森大祐著
天明の大飢饉で、伊勢国津藩の名家、藤堂家も財政が窮迫していた。藩主、高嶷は藩政を立て直すためにわずか300石で20代半ばの茨木理兵衛重謙(しげかね)を郡奉行という要職に就ける。
ある日、大坂から杉立治平が帰国した。理兵衛は伊勢の最重要産品である伊勢木綿を御用商人を通さず大坂で直売しようとしたが、杉立はそれをとがめた。
だが、理兵衛は藩の取り分が増えると言って譲らない。御用商人の川喜多は、藤堂家に用立てている1万両を即日返済してほしいと言い出した。家老の藤堂監物は、理兵衛をかばいながらも彼の政策を警戒していた。
藩の財政を立て直すため奮闘する下級武士を描く歴史小説。 (中央公論新社 2530円)