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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

「孤独のグルメ」進化あり 目立たず確実に“ドラマ度”高まる

公開日: 更新日:

【連載コラム TV見るべきものは!!】

「孤独のグルメ」(テレビ東京系)の初登場は3年前。この秋、堂々の第5シリーズである。しかも、これまでの深夜バラエティー枠から、「ドラマ24」というブランド枠へと移行した。いわば“看板ドラマ”として認知されたことになる。

 とはいえ、主人公の井之頭五郎(松重豊は完全に一体化)自身に大きな変化はない。例によって、仕事で訪れた町の大衆的な店で、ひたすら胃袋を満たすのみだ。その潔さがファンにはたまらない。

 それでいて、新シリーズに全く手が加わっていないかといえばウソになる。例えば先週の「千葉県いすみ市大原」編。五郎が港で伊勢エビを見かける。今回は「千葉で伊勢エビ?」という意外性できたかと思いきや、それはフェイント。結局、飛び込んだ食堂で食べたのは「ブタ肉塩焼きライスとミックスフライ」である。このいすみ産のブタ肉、厚切りの塩焼きが何ともうまそうで――。

 また食堂に至る過程で出会う、市役所職員(塚地武雅)とのやりとりもおかしい。どこから見ても地元民という風貌にもかかわらず、東京からの移住者だという。「都会っぽさが抜けなくて」のセリフに、五郎が口には出さず「抜けてます、抜けてます」とつぶやくのだ。塚地も朝ドラ「まれ」以上のハマリ役だった。

 目立たぬよう、しかし確実に“ドラマ度”を高めた今シーズン。まだ見てないなら、お急ぎを。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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