「オレは最初からわざわざ穴をあけた服は好きじゃなんだ」
「テレビ収録で、大量のアクセサリーと衣装を前に、『これで売れたんだから、やらなきゃ手抜きと言われちゃう』と笑っていた。楽屋でメークをしている静かな姿は、きっと絵を描く時と同じ感性や遊び心があるのだろうなと感じさせます。鏡越しに自分と対話をして、ステージまでの助走をしているんだな、とも。私が楽屋を離れ、しばらく経って戻ってみると、その日の作品が仕上がってる、という感じでしょうか」
衣装担当だった片岡さんには、こんな思い出もあるそうだ。
「清志郎さんの休養期、『病院の冷房対策に長袖の上着を買ってきてくれない?』と連絡を受けました。夏のことでしたから長袖がなかなか揃わなかった。私が用意した中の一着、穴やほつれが特徴のダメージ加工のジャケットを見て、『う~ん。最初からわざわざ着古したふうに穴を開けたりするのは、どうも好きじゃないんだよ、オレらの世代は』と。意外な、フツーのオジさんの一面をのぞかせたひと言でした」 (つづく)