マネジャーをダミーにして人混みの中を駆け抜けたことも…
道といえば、週末ごとにあったイベントで、ある時、こんなことがあった。
イベントには会場にいつもたくさんの人が来てくれていた。ステージに上がるまでの道中には、裏でステージまで行けるところもあれば、お客さんのいるところを通っていく場合もある。そこで揉みくちゃにされたのだ。お客さんのところを通るときは、いつも警備の人が道を案内してくれるし、人との距離もとってくれるのだけど、その時はそれでも追いつかなかった。
ぐしゃぐしゃにされながら、私は自分で自分を抱きしめるように体を丸めて、その場を抜けた。途中、誰かに髪を引っ張られたような感覚はあったが、こういう時は体を触られたりすることは大いにある。頭や髪、腕などを触られてもいちいち構ってなどいられない。とにかくその場を抜けることが最優先なのである。
そうやって、何とか扉の向こうに避難して、スタッフともどもほっとした時、「あれっ」とマネジャーが私の頭を指さした。衣装とお揃いの布でつくられた、髪飾りがなくなっていることに気づいたのだ。それはもう、私の手には戻って来ることはなかった。どこかの誰かの手元にあることだろう。捨てられたり、なくなっていなければいいな。その衣装を見ると今も思い出す。