人の使命感を描くも…「最後の忠臣蔵」ラストの切腹に疑問

公開日: 更新日:

 ただ、孫左衛門と可音の関係は不自然でもある。可音にとって乳児から育ててくれた孫左衛門は実父も同然。恋心を抱くことはあり得ない。「曽根崎心中」を使うために無理をしたのだろうか。

 見どころは可音の輿入れだ。最初は夜の山道を孫左衛門一人が付き添う寂しい風情だったが、たいまつを手にした吉右衛門が大勢の従者とともに加わってほっとさせられる。さらに旧浅野家の家臣が続々と参加。嫁入りの行列は頼もしさを増していく。浅野内匠頭の乱心から討ち入り、浪士の切腹と続いた血生臭い物語を美しい映像が清めた。

 それだけにラストは疑問が残る。杉田監督は切腹マニアなのか、それとも「ハラキリ」好きの外国人を意識したのか、派手な切腹を披露。婚礼という晴れの日を血穢(けつえ)で汚したことになる。たしかに池宮の原作には「鮮血が飛沫(しぶい)た。その血を浴びて二つの位牌が真赤に濡れた」とあるが、ここまでやる必要があったのか。

 考えてみると、日本人は時代劇に派手な死に方を期待しがちだ。そうした血を求める習性がこの描写を生んだのなら、われわれ時代劇ファンの責任は重い。 (森田健司)

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ