「誰のおかげで飯食ってんだよ」同年代アイドルの怒声に…
当時の芸能界は上下関係に厳しく、楽屋が相部屋の場合、先輩が奥、新人はドア付近と決まっていた。番組の収録では、先輩の控室に挨拶に行くのが新人の決まり。それを守り、礼儀正しくしても、ご機嫌を損ねてしまうこともあった。
ある売れっ子の女性歌手の方は、控室前にご本人がいらしたので「おはようございます」と頭を下げたが、聞こえなかったのか素通り。その数分後、スタッフの大勢いるスタジオのステージ上で私を振り返った。
「おはようございます」
ゆっくりと、とても丁寧な挨拶をされてしまい、私は居場所をなくす。
トイレで聖子さんとすれ違ったときは、感動した。きゃしゃな姿はお人形さんみたいなのだ。マネジャーに伝えようと、喜んで控室に戻ると、隣の部屋から女性の怒鳴り声が壁越しに響いてきて、驚いた。同年代のアイドルらしき声で、「誰のおかげで、飯食ってんだよ!」と聞こえたのだ。信じられないものの、さらに聞こうと、マネジャーと2人、壁に耳をあてた。そのアイドルのことは、業界では有名な話だと後に知る。テレビからはうかがい知ることのない裏の顔、世界が広がっていた。