渡辺プロ<1>芸能ビジネスの原型つくった渡辺晋の創業理念
芸能ビジネスのルーツは1950年代にまで遡る。現在、芸能プロは都内だけでも優に100は超え世間にも認知されるビジネスだが、当時は役者や芸人と称される芸能人に対して、偏見の目で見られ地位も低く見られていた。そんななか、「芸能人の地位向上、待遇改善」と立ち上がったのが、ジャズバンドをなりわいとしていた故・渡辺晋氏だった。自ら冷や飯を食った経験から晋氏は妻や知人と共にミュージシャンらの地位向上を図るべく、出演交渉からギャラなどを取り決め、さらにレコードや番組を制作して興行収入が入る仕組みを構築。現在の芸能ビジネスモデルの原型をつくった。1959年、名字をそのまま社名にした「渡辺プロダクション」(現・ワタナベエンターテインメント)を設立。初期にはハナ肇とクレージーキャッツ、ザ・ピーナッツらが所属。ビジネスを拡大していった。
「歌手の供給だけでなく、どうしたら面白い番組を作れるか、ナベプロの人のほうが精通していた。そのため、晋氏の自宅にテレビ局のスタッフが“ナベプロ詣で”し、日夜、会議を開いていた。車座になって侃々諤々、朝方まで討論したものです」(元テレビ局社員)