苦闘14年…天才芸術家・草間彌生の生き様を追い続けた理由

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「心の悩みを美術で還元している」

 だからこそ、いかに“置かれた境遇”がキャリアに寄与しているかが見えてきた。草間自身が「心の悩みを美術で還元している」と語るように逆境の連続が才能を昇華させた。今作品では性差別や人種差別、心の病と闘いながら、数多くの壁に直面する草間にスポットを当てている。

「劇中で描かれるNY時代では、彼女の作品からインスピレーションを受けたアンディ・ウォーホルやドナルド・ジャッドらの男性芸術家たちが次々とブレークしていきます。彼らが着々とキャリアを積み上げる隣で、草間は認知すらされない。私自身も男性社会といえる業界に身を置いているので、自分の経験と重なりました」

 ドキュメンタリーが完成するまでに14年の歳月がかかった。

「資金繰りを含め、ひとつの題材と長期間向き合うことは、クリエーターとして当然フラストレーションがたまります。ですが、時間とお金とエネルギー、そして無数の努力を積み重ねてきたぶん、何が何でも着地させたいという気持ちが強かったですね」

 出来上がりを見た本人の感想は?

「感想のひとつに『もっと新しい作品をフィーチャーしてほしい』と言われました。今を力強く生きている彼女らしい言葉です。私だってもっと入れたかったです。泣く泣くカットした素晴らしい作品たちはぜひ、エンドロールに注目してみてくださいね」

 才能は「無限」だ。

(聞き手=白井杏奈/日刊ゲンダイ)

▽ケント州立大美術学部を卒業後、南カリフォルニア大映画学部で美術学の修士を取得。脚本家、映画監督、プロデューサーとして活動し、主に類いまれな人生を歩む人々に焦点を当てたドキュメンタリーや自伝作品を手がける。

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