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大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

ハイレベルで大混戦 アカデミー賞にお祭り感が戻ってきた

公開日: 更新日:

 今週発表された米アカデミー賞のノミネートを見て、ちょっと興奮した。近年で、もっとも充実した作品群が並んでいたからだ。ここ何年か、アカデミー賞はつまらなくなっていた。理由のひとつとして、それなりにクオリティーは高いが、知名度がそれほどではない作品が多かったことが挙げられる。

 だが、今年は全く違う。ダイナミックだ。筆者が昨年のベスト3に入れた作品に加え、公開されたばかりの傑作「フォードvsフェラーリ」も作品賞に入り、大ヒットを切った韓国映画「パラサイト 半地下の家族」もこの部門に名を連ねた。個人賞も、これらの作品の流れにある程度準じる。

 アカデミー賞は、華やかなのがやはり王道だと思う。そのためには、多くの人が知る作品が必要なのだ。世界各国の作品を対象に、芸術性を重点的に競い合う欧州の映画祭とは違う。映画のもつ祝祭性、お祭り感覚が、アカデミー賞には大事だと感じる。行き過ぎは困るが、今年の並びは節度がある。

 毎年、どの作品や俳優が主要賞を取るのかと国内メディアも躍起になる。近年、そんな記事には全く興味がなかったが、今年は気になる。動画配信サービス会社のネットフリックスが製作した「アイリッシュマン」や、韓国映画の「パラサイト」が作品賞を取ったら、アカデミー賞の歴史は変わる。そうならなくても、納得のいく受賞結果になるだろうと推測できる。

 ただ個人賞になると、ベテラン勢が多いのが、逆の意味で気になる。いまのハリウッドは、知名度が高い俳優となると、どうしてもベテランに偏る。この場に人種を超えた若手が入り込んでこそ、米映画の活力は本物になることだろう。いずれにしろ、羨ましい賞であることに変わりない。

【連載】大高宏雄の新「日本映画界」最前線

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