ちあきなおみの「喝采」はなぜ伝説の一曲となったのか
■“実話”との触れ込みで売り出されたが…
当初、この曲はちあきなおみの悲しい実体験を基にしたとの触れ込みでプロモートされた。歌謡曲にはタブーとされた「届いた報らせは黒いふちどり」とか「喪服」といったマイナーな歌詞を使ったドラマチック歌謡は、ちあきなおみの歌唱力によって迫真力と凄みが漂い、それゆえ「現実にあったことを歌っているのか」と、聴く人を錯覚させ、胸を激しく揺さぶったものだ。
それが実話とかフィクションという話を超越してしまったのは、彼女の歌声の幅広さのたまものであろう。
今なお、“歌わない喝采歌手”として、伝説だけが広まるちあきなおみ。「もったいない」と思うか、「このままでいい」と思うか、そこは意見が分かれるところだろう。