二度とあの頭痛は嫌だ…上柳昌彦さん下垂体腺腫卒中の手術を振り返る
上柳昌彦さん(ラジオパーソナリティー/67歳)=下垂体腺腫卒中
首筋から頭にかけてどんよりとした痛みが数日続いた後、耐えがたい頭痛に襲われ、近所の救急外来に駆け込んだのは2022年9月1日の夜でした。そのときはまだ、担当している早朝のラジオ番組に出るため、深夜2時半には通常通り放送局に行くつもりでいました。でも、CTを撮ってくれた技師の先生が「下垂体の辺りにイヤな感じなものがあるのでMRIで詳しく調べた方がいい」と言うのです。
点滴で頭痛は改善したものの、その病院にはMRIがなく、困って知人に電話をすると、すぐに知り合いの病院を紹介してくれて、受診できる段取りまでつけてくれました。
番組は急きょ、お休みさせていただいて、翌朝、その病院でMRIを撮った結果、「下垂体腺腫卒中」という聞きなれない病名を告げられました。下垂体に腺腫(良性腫瘍の一種)があり、そこから微量の出血があって激しい頭痛が起こったのだろうとのこと。下垂体は脳の真ん中にある小指の先ほどの小さい部位で、ホルモンの分泌の司令塔であり、自らもホルモンを出すとても大事な器官だそうです。
良性腫瘍ですし、手術せずに経過観察という選択肢もありました。ただ、80歳ぐらいまで放置すると視神経を圧迫するほど腫瘍が大きくなって、物が見えづらくなる可能性もあると言われ、最終的に手術を選びました。二度とあの頭痛は嫌だと思いましたしね。
鼻の穴から内視鏡を入れて行う手術で、聞いた話によると骨をひとつ削ると副鼻腔で、その先をもうひとつ削ると脳の領域らしいです。問題の腺腫を切除した後、削った穴は人工骨を接着して塞いだそうです。
つらかったのは、そこからの3日間でした。なにしろ両方の鼻の穴にウインナーぐらいの詰め物をされて口呼吸しかできないうえに、体は動かせないし、水も飲んではいけなかったのです。特に1泊目はICU(集中治療室)だったので、一晩中、明るい部屋の中で重症な患者さんのうめきや叫び、さまざまな機械音、誰かがベッドの柵をカンカンたたく音が聞こえて、「えらいところに来た」と思っていました。
でも、ICUを出るときにチラッとベッドをカンカン鳴らしていた人を見たら、若い男性で、体が不自由でしゃべれない感じでした。それを見た瞬間、あのカンカンは「生きたい」という彼の言葉だったように感じて、胸にくるものがありました。
3日間で鼻の詰め物が取れると、今度は絶えず水を飲まなければなりませんでした。なぜなら尿が出続けてしまうからです。通常、塩分が多い場合は尿をためて血中塩分を薄め、塩分が薄いときは尿を出して濃くなるように下垂体からホルモンを出しているのだそうです。でも、下垂体をいじってしまったので尿がとめどなく出て、尿道カテーテルからつながる尿袋がすぐパンパンになっていました。