末期がんで逝った父・三郎 唐沢寿明が演じたモデルと晩年
さて、唐沢演じる古山三郎。モデルは江戸時代から続く老舗呉服店「喜多三」の8代目店主・古関三郎次という人物である。名前からわかる通り三男だが、長男と次男が早くに亡くなったため、あとを継ぐことになった。
とにかく、この頃の喜多三はものすごく景気がよかったらしい。新しもの好きの三郎次はドラマでも描かれている通り、東北で2台目というキャッシュレジスターを購入。まだ高価だった蓄音機も買い入れ、民謡や浪曲から西洋音楽まで、さまざまなジャンルのレコードをかけていたという。長男(古関裕而)がのちに作曲家として羽ばたくのも、こうした環境があったからだろう。
だが、栄華は長くは続かなかった。第一次大戦後、インフレが襲い、呉服がまったく売れなくなったのだ。さらには、借金の保証人になっていた知り合いが夜逃げ。喜多三は事業を大幅に縮小し、使用人も全員、解雇するしかなかった。
三郎次は次男の浩之(ドラマでは浩二)に経営を任せ引退。しかし、まもなく昭和恐慌が襲い、喜多三は存続の道を完全に断たれた。晩年の三郎次は趣味人として生き、能楽をうたう日々だったという。