「後に残る言葉」は相手に誤解も傷も与える危険をはらむ
おい。青年。よけい面倒くさいぞ。これでも日々物を書いているわたしは極力仕事以外で文字を書きたくない。それに物書きの端くれとして、言葉の怖さを知っている。残る言葉というのは相手に誤解も傷も与える危険をはらむので、気をつかうのである。わたしなどはっきり申せば、小説を書くときよりLINEやメールの返信のほうが別の気をつかいすぐに焼酎を飲みたくなる。が――すぐに青年からわたくしのパソコンにメールが届いた。仲介者のY編集者に電話すると、「なんか! とにかくそういう感じで! 頼みます!」と3回はビックリマークがつくくらいの元気の良さでごまかされる。新作小説の宣伝もしてくれるという甘い餌があるので、仕方なく青年のメールを開いた。と、驚いた。軽い自己紹介とわたくしへの礼の言葉につづいていたのは、実に簡潔な文章だった。
〈一雫ライオンさま お忙しいと思いますので、下記、質問のアンサーをくだされば幸いです!
質問① どうすれば売れる小説が書けますか?
質問② 「経験も大事」とおききしました! ですが僕はまだ大学三年生で経験が足りません! なので、ぜひライオンさんのとっておき面白エピソードを教えてください!