小説には痛みと苛立ちが必要…恥をかく覚悟はあるのかい?
「どうすれば脚本家や小説家になれますか?」。こんな純朴な質問を投げかけてきたのは21歳の青年。うっかり相談に乗る羽目になったのだが――。
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だが困った。わたしはまっとうな筋で物書きになったわけではない。簡単にわたくしのプロフィルを要約すれば、東京・阿佐ケ谷に生まれる。みごと安倍晋三氏もお通いになっていた素晴らしき私立高校を17歳で退学。
「おまえみたいなのはどこの高校も拾ってくれないから大学も無理だし、俳優にでもなったらどうか」と母親の前でたばこぷかぷか、大股を開きながら言ってくださった教頭先生のありがたき言葉により明大中野高校定時制へと進み、明治大学政治経済学部2部の推薦を頂く。これ大学には行ったわけだしと学食の位置もわからぬまま5日ほども通わず念願の自主退学。そして愚かにも俳優というものを志し35歳になるまで税金のぜの字を知らんでも生きていける、まったく立ち行かぬ男だったのである。
その後は――また要約すると35歳で立ち行かなさすぎて劇団を立ちあげる。書く者がいなかったので脚本を書くと、自らが書いた台本のどの役にも自分をキャスティングできず、「こりゃ売れないわけだ」と天を見上げ麦焼酎を飲む。