田崎健太氏寄稿 浅香光代さんは最後まで華のある主演女優

公開日: 更新日:

「この人には恋みたいな感情を感じたことはない」

 と悪態をつきながらいつも仲が良かった。取材では、世志さんがしゃべり続けることが多かったが、常に主役としての浅香さんへの敬意が感じられた。浅香さんが世志さんに手を引かれて現れることもあった。それでも舞台に上がると、彼女の背筋がぴんと伸びて、伸びやかな声を出すことに、ぼくは目を見張った。

 最後に会ったのは、今から約二年前、「全身芸人」の発売記念イベントだった。

 彼女はトークイベントを機嫌よく終えると、ぼくや関根さん、版元の太田出版の社長、編集者たち全員と握手した。特に担当編集者の村上清さんの手のひらが気に入ったようで「あなたの手は女の子のように柔らかいのね」とほほ笑んだ。

 すでに九十歳を越えている大人の女性にふさわしい表現とは言えないかもしれないが、実に可愛い笑顔だった。彼女はその場にいる人を引きつける何かを持っていた。その心のつかみ方に、彼女のたどってきた道が透けて見える気がした。


 浅香光代は、最後まで華のある、主演女優だった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 2

    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず

  3. 3

    大谷翔平は来季副収入100億円ガッポリ、ド軍もホクホク! 悲願の世界一で証明した圧倒的経済効果

  4. 4

    橋本環奈のパワハラ疑惑のこと? 嵐・二宮和也の正月番組のワンシーンが視聴者の間で物議

  5. 5

    パワハラ疑惑の橋本環奈はやはり超多忙?マネジャーが6年前「あなたに想像出来ないほど環奈は忙しい」とファンに伝えていた

  1. 6

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 7

    闇バイトの応募者たちは一体何者なのか?若者に自重呼びかけるTV報道番組の「盲点」

  3. 8

    がんの4割がアルコール消費と関係? 米国がん協会の新たな研究結果に騒然

  4. 9

    日本一DeNAが「巨人に惨敗」の屈辱晴らす大補強!売上270億円超で原資に不安なし

  5. 10

    農相・法相の後任人事でも石破カラー封印…「党内融和」優先に世論ますますがっかり