著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

こんな頼りない奴によくもこのコロナ地獄を任せてしまったもんだ

公開日: 更新日:

 そんな時、♪サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ~と歌うクレージーキャッツの植木等の能天気な顔を思い出した。高度経済成長期に現れたのんきソングだ。「ニッポン無責任時代」なんていうアンチ真面目サラリーマン映画もあった。国民全員がせっせと金儲けに走っていた昭和を皮肉っていたのか。我らはその頃、まだ小学生のクソガキだったが、そんなバカ歌に調子を合わせていた大人をよそ目に、自分の将来になど興味もなく、夕飯のおかずがイモと大根の炊き合わせの一品だけでも文句を言わず、月に一度か母親が作ってくれるクジラの肉のすき焼きに舌鼓を打っていたのだった。あの頃のガキどもは毎日同じ服を着て、靴下の先に穴が開いていても気にとめず、頑丈に育ち、日々の喜怒哀楽にたくましく生きられたのだ。夜になれば、アメリカ製のテレビ映画の虜になり、学校の宿題も忘れて寝てしまって、朝起きると、また新しい今日が待っていてくれたのだ。

 我が映画「無頼」の宣伝のために昭和30年代後半から40年代のことをあちこちの地方ミニFMラジオの電話でしゃべっていたら、若いDJたちから「元気だった昭和の時代を描くハチャメチャ映画をもっと作って下さいよ」と口々に言われた。欲望の向かうまま生きた時代は確かに今より何倍も人々に熱い心があり、何でも猛烈でシンプルで感動的だった。今「ファンタスティック!」と声を上げるものがない。そんなヤツと出会ってみたいよ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」