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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

日本の財政も信用ならないし給付金もどこに配られるやら

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 まず、米占領軍向けの「星条旗新聞」や「朝日新聞」が競って報じたニュースに驚く。「1946年(昭和21年)4月19日、東京湾から大量の金塊が発見された」とある。ちょうど75年前だ。この1月1日、天皇は「人間宣言」して、国民に“人間になりました”と伝えたばかりだった(当時の国民がそれをどう納得したのか、まったくわからないが)。とにかく、米軍が海底から金、銀、プラチナの延べ棒を(当時の額で)20億ドル分以上も引き揚げていた。この財宝は連合軍の上陸直前に、血迷った日本軍が投げ込んだ隠匿物資と判明し、軍が本土決戦のためにかき集めた国民の財産だったのだ。で、それらは日本銀行の地下に運ばれたが、その後、地下室から消え、誰がどこに運んだのやら、米軍が持って帰ったか、日本政府が復興資金に使ったのか、誰が運び出したか、よく詐欺話に出る「M資金」になったのか、国民は何も知らないまま、今に至っているというのだ。

 驚くことばかりだが、日本政府はポツダム宣言を受諾した日、「米軍の上陸前に軍需物資はすべて放出して処分しろ」と軍にだけ通達を出し、金銀財宝だけでなく隠匿していた食糧や必需品(今の価値で数兆円分)を、戦争指導者、軍人、官僚、御用商人らで先に山分けしたと書かれている。国家予算で国民から買い集め、徴収して隠しておいた物資をやつらは横領し、今度はそれらを闇市に流し、飢えた国民に売りつけて大儲けしたと。敗戦直後、日本には「経済を2年間支える物資があり、食糧も大量に隠されていたし、ちゃんと分配されていたら数多の餓死者も救われたはずだ」と。75年前、日本はこんな再出発をしていたのだ。

 これじゃ、今の日本の財政も信用ならないし、コロナ対策で出るとされるカネもどこに配られるやら、分かったもんじゃない。あちこちで横領がバレそうだ。

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